Twitter(現X)やInstagramを活用したソーシャルマーケティングを成功させているのは、今やIT企業ばかりではありません。
今回はTwitterを活用し、店舗のファンを増やし続けている創業1964年の老舗のカレーハウス「カレーハウス11イマサ」のTwitter運用を担当する原田右恭様にTwitterの活用術を取材しました。カレーハウス11イマサがTwitterを活用し、ファンとのコミュニケーションを巻き起こしている背景には、どのような活用方法があるのでしょうか。
Twitterはお店に付加価値を生むコミュニケーションの場
カレーハウス11イマサは、新宿駅直結の京王モール地下1階にあるお店です。京王モールが建設された当初からオープンしているこのカレーハウスには、1日1000人もの人々が訪れます。
店内はスタンド式になっており、食券を購入したお客様がカウンターで食事をしていくスタイル。1人あたりの滞在時間は約15分程度と忙しいビジネスマンやこれから出かける人々が”サッ”と手早く、美味しいカレーを食べられるお店になっています。
お店で提供しているカレーは、基本のポークやビーフ、チキンを中心に豊富な味やトッピングが人気です。特に一定期間ごとに変わる期間限定カレーは、インターネットニュースでも話題になるほどお客様に好評です。
そんなカレーハウス11イマサのTwitterの中の人は、SNSをはじめ株式会社今佐のWebマーケティングを担当する原田様。コンサルティング会社での勤務経験を生かし、同社初のWebマーケティング担当者として社内に新しい風を吹かせる役割を担っています。
(以下、質問は筆者。回答は全てカレーハウス11イマサの原田様)
──なぜ、カレーハウス11イマサのWebマーケティング担当をはじめたのですか?
まずはホームページを制作したいという話から、ITに関連することを全て任せたいというオーダーで、Webマーケティングを担当することになりました。
──はじめてのWebマーケティング担当者ということもあり、大変だったのではないでしょうか?
僕が担当をはじめた時は、Webマーケティングについてまさに更地の状態でした。この状況からWeb経由でお客様に来店してもらうには、どうしたら良いかと考える必要がありましたね。
はじめはHPを作るのがミッションだったのですが、調べてみるとグルメサイトの食べログさんやRettyさんが優位の中でWebサイトからのお客様の流入は、ほぼないに等しいことがわかりました。そこでお客様とコミュニケーションをとる方が良いのではないか、とTwitterを開設したんです。
──お店とお客様、双方向にコミュニケーションをしよう!というのがTwitter活用のはじまりだったんですね。
カレーハウス11イマサは1人の滞在時間が15分以下です。なので、必然的にお客様とのコミュニケーションは生まれづらい状況になります。そんな中でただ美味しいカレーを手早く食べられるお店では、愛着は生まれにくいんですよね。
だからこそ、Twitterで営業してお客様の新規獲得をとにかくするのではなく、既存のお客様とのコミュニケーションを積極的に行いたいと考えています。
──新規のお客様の獲得ではなく、既存のお客様とのコミュニケーションを重視しているんですね。
はい。僕はお店に付加価値を生むためにTwitterを活用しています。
今後、飲食店において増税などの影響は避けられません。お客様に「早い・安い・うまい」を提供することをモットーにしているイマサも、それは例外でないです。
55年食べ続けられたカレーをどうしたらこれからの55年も食べてもらえるのか。そのためにカレーハウス11イマサが、安さだけでなく、Twitterの活用によりお客様に付加価値を提供し、愛着を持ってもらえる場所になることを目指しています。
Twitterでお店に来てくれている人が見える化する
──お客様とのコミュニケーションを加速するために具体的にはTwitterでどのようなことをされていますか?
たとえばTwitterでマイカレーを作るという企画をしています。カレーと組み合わせられるトッピングでお気に入りのカレーを見つけよう、という企画なんです。
こういった形で11イマサは基本的にNGなしでやらせてもらっています!(どうしても皿に乗らない場合は別皿提供になります。)正直、既存メニューはベースにあるだけですので、ぜひ“利用”してください!そしてTwitterで見せてくださいね。マイカレー文化、皆さんと共に作っていきます。 https://t.co/jLoXppSGhP
— カレーハウス11イマサ (公式) (@Curry11_Imasa) May 20, 2019
お客様がマイカレーを投稿してくれるのをリツイート(現リポスト)したり、こちらからもトッピング案を提案したりします。
お客様もただトッピングをして食べるのではなく、Twitterで美味しさを共有し合う楽しみができるので、単価が上がることによりお店の売上アップにも繋がります。
──SNSへの発信と言うと若い層向けなイメージもありますが、ターゲットのビジネスマンの方ともコミュニケーションをとられていますか?
カレーハウス11イマサは20代後半から40代の男性が最も多く来店していますが、Twitter活用には問題ないですね。むしろアクティブユーザー層と来店者層がマッチしている印象です。
実際に店舗にTwitterの案内を置いておくだけで100人程のフォロワーが増えました。特にInstagramよりもTwitterの方が反応が良い気がします。
──実際にTwitterをはじめてどのようなことを意識していますか?
2017年5月からTwitterをはじめたのですが、フォロワーが増えることが必ず来店には繋がるわけではないので、バズる投稿やフォロワーを増やしていく施策よりも店舗とTwitter上のコミュニケーションでロイヤルカスタマーを増やすことを意識しています。
そのため、エゴサーチなどは欠かさずに行っています。大切なお客様の声は必ずキャッチするように心がけていますね。
──Twitterをはじめて印象的だったことはありますか?
BARBEE BOYS(バービーボーイズ)というバンドに通称イマサさん(いまみちともたかさん)という方がいるんですが、同じイマサ繋がりということでカレーハウス11イマサを知ってくれていたんです。
Twitterを開設してから、イマサさんがTwitterのアカウントでカレーハウス11イマサについて絡んでくれるようになって。お店にもきてくれていたことがわかったんです。
その他にもTwitterをはじめることでお店に来店してくれていた様々な人たちと繋がることができました。
SocialDogはもう一人の頼れるデータ分析担当
──そんなTwitter活用の中でSocialDogを導入したきっかけは何だったんですか?
Twitterをはじめる際にデータを分析する目的でツールを探し、海外の無料ソフトを使っていました。ただ、無料ソフトなのでUIがわかりにくかったり、CSVが突然使えなくなってしまったり、海外のものなので言語の壁があったり、と使いにくい部分が多かったんです。
そんな経緯で日本の安定して使えるツールを探していた時に、インターネットで見つけたのがSocialDogです。
──どのようにTwitterの運用促進に活用していますか?
予約投稿は最もよく使っています。来店データや過去のデータを分析して、適切なコンテンツを適切なタイミングで投稿するために活用しています。
また、SocialDogの分析画面は見やすいので、営業会議の時に印刷して持っていっています。今までは、自分で作成してまとめる時間が必要だったのですが、これさえ見せればみんな理解してくれるので、もう一人のデータ分析担当のようによく働いてくれています(笑)。
──データ活用の部分なのですが、来店データとTwitterのデータはどのようにすり合わせていますか?
特に企画部分での連携が多いですね。キャンペーン時に実店舗で集計したデータとSocialDogで期間内に反応されたデータなどをすり合わせることで、効果やどんな傾向があるかを見える化することができます。
たとえば、「いいねした人は大盛り無料」といったキャンペーンであれば、実際にいいねしてくれた人がどれくらい来店してくれたか、といったこともわかります。
──いままでTwitterのキャンペーンをしていなかったお店で企画を実施するのは大変ではありませんでしたか?
店員さんでスマホを持っていない人もいる状況で、正直渋い顔をしていた人もいたのも事実です。ただ、社内メンバーに対してTwitterの重要性や効果を頻繁に伝えていたので、いざ実施する際には、OKを出してもらえました。
回転率が大切なお店なので、オペレーションが増えると回転率も下がります。なので、手間が増えないようにできるだけ現場の人が混乱しない運用フローにすることを心がけています。結果として第一回のキャンペーンでは、100人程度が来店してくれました。
ロイヤルカスタマーを増やし、愛着を持たれるカレーハウスに
(カレーハウス11イマサのTwitterキャンペーン画像)
──Twitterをはじめて良かったな、と思うことはありますか?
FC東京のスタジアムへは、新宿を経由して行かれる方が多いのもあって、サポーターの方がよくカレーを食べに来てくれるんです。僕もサッカー好きなので、FC東京のサポーターの方々に「カレーで必ず還元します!」とツイート(現ポスト)したんですよね。
そこから11イマサのカツカレーを食べたら負けない、という神話もサポーターの中でできてきました。今では、オリジナルユニフォームを自作で作ってちょっとしたフォトスポットにもなっているんですよ。
サラリーマンが訪れるお店なので土日にはお客様が減ってしまいますが、だんだんとサッカーの試合を見に行く人たちが来てくれるようになってきました。
──Twitterの効果もお店として感じられていますか?
はい。今年から広告宣伝費として、予算をTwitterに振り分けています。すべてがTwitter効果とは言えませんが、マイカレーをつくる企画の効果もあり、トッピングが出る数も20%ほど向上して、お客様の単価が上がりました。
数字で見えない部分でも、お客様とお店との繋がりが多くできたのも良かったと思っています。これからもTwitterのコミュニケーションを基軸にお客様に愛されるお店を目指していきたいです。
──今後カレーハウス11イマサのTwitter運用の展望はありますか?
飲食店にとってTwitterはボディーブローのようなものだと思っています。
1日5件ほどカレーの写真が乗った投稿が集まる日もあるのですが、こういった投稿をしてくれるカレーハウス11イマサを楽しんでくれる仲間をじわじわと増やしていきたいです。
また、中の人として、お客様が求めていることを一番最初に察知し、その内容を営業会議で共有できるよう心がけています。日本一の中の人になれるようお客様目線を常に意識していきたいです。
最後に、カレーハウス11イマサにいつも足を運んでいただいているお客様、いつもありがとうございます。皆さんのおかげで、Twitterアカウントがインタビューされるメディアに成長しました。これからも、カレーハウス11イマサをよろしくお願いいたします。
オフラインのお店とオンラインのTwitterを上手に活用するカレーハウス11イマサ。オフラインの場所や提供価値があるからこそ、より効果的な施策が実施できることもあります。ぜひ、カレーハウス11イマサの事例のように、新しい価値づくりをTwitterからチャレンジしてみてはいかがでしょうか?